シンプルライフ
インタビュー#05

休日の愉しみ

都会でも田舎暮らし


 自宅の周りにはホタルも飛び交う豊かな自然、休日は家庭菜園を耕す日々。悠々自適の田舎暮らしを楽しむMさんのお宅が、新宿から30分以内の通勤圏にあるとは、誰が信じられるでしょう。
 Mさんの家は、自分の望む「暮らし」を基準に、ロケーションも建物も考え尽くされています。大手メーカーの建売り分譲一戸建てやマンションでは、なし得ない理想の暮らしがそこにありました。
 木造平屋建ての緩やかな住まい。本質はハード(物)ではなくソフト(暮らし方)にこそあるということを、不必要な物をすべて削ぎ落としたシンプルな建家が物語っています。
 家は、国や気候風土によって様々なスタイルがあります。日本の住宅はこうあるべきという既成概念は誰のためにあるのでしょうか。その枠を取り払ったとき、自由な生き方が手に入れられる気がします。

たたきの土間に薪ストーブ、
自由設計だからできるホンモノの贅沢

 白い漆喰のシンプルな壁にひときわ重厚感を放つ玄関の引戸。なんでも古い蔵で使われていた扉を玄関ドアに流用したとか。当然框は引戸に合わせて作られている。家にあわせて建具を選ぶのではなく、気に入った建具にあわせて家を設計することができるのも、自由設計ならでは。
 その玄関を入り足下を見ると三和土(たたき)の土間があらわれる。三和土(たたき)とは、赤土や砂利に石灰とにがりを混ぜて練り合わせ、叩き固めたもの。現在ではコンクリートなどで仕上げた土間のことを「たたき」とも言いますが、コンクリートが無かった時代の土間の伝統的な工法なのです。
 今では施工できる業者が減っているのでなかなかお目にかかりませんが、耐久性はコンクリートより高く、夏場はコンクリートのように熱くならず、水にも強く環境に優しい素材なのです。
 その三和土の土間に鎮座するのが、Mさんご自慢の薪ストーブ。なんと冬はこの薪ストーブ一台のみで、家中の暖をまかなえるのだとか。その秘密は、壁を天井までつけずに、吹き抜けにした平屋構造なので、暖気が建物全体に廻る設計のおかげ。緩やかに仕切ることで、かえって暖房効果が高くなるという逆転の発想です。さらに、燃料の薪は近くの造園業者からダタで譲ってもらっているとのこと。暖房費が実質0円とは、なんともエコロジー(環境に優しく)でしかもエコノミー(経済的)な話。耐熱レンガで囲われた柔らかなフォルムが、インテリアとしても抜群の存在感を放っています。